ゲームにおけるUXデザインの基本ガイド
2024/04/24
近年、ビデオゲームのグラフィックは飛躍的に向上しています。豊富でより綿密なUIデザインのおかげで、ゲームの世界はかつてないほど躍動的で臨場感にあふれています。しかし、魅力的なUXデザインがなければ、どんなに美しく洗練されたビデオゲームも、批評の嵐にさらされてしまうでしょう。
ゲーマーが平均して毎週8時間27分もビデオゲームに費やす理由は、単に見た目の美しさだけではないのです。パックマンであれフォートナイトであれ、人気があり商売的にも成功しているゲームは、直感的で使いやすく、親しみやすいものです。
この記事では、UXゲームデザインの内部と外部について考察します。UXゲームデザインとは何か、どのように機能するのか、そして、UXゲームデザインを一段上のレベルに引き上げるにはどうすればいいのかについても解説します。
UXデザインとは?
UXデザインとUIデザインは、いわば夫婦のようなもので、それぞれ異なるものでありながらも、密接につながっています。
UIデザインは、レイアウトや色からタイポグラフィやアイコンに至るまで、製品の視覚的でインタラクティブな側面に焦点を当て、製品を美しく直感的なものにします。言い換えれば、UIは使いやすく理解しやすい、美しい製品をデザインすることに関わります。
一方、UXデザインは、製品やサービスに対するユーザーの全体的な体験(最初の印象から使用後の印象までの)に関わります。UXデザイナーは人間心理を深く掘り下げ、ユーザーのニーズ、動機、行動を理解しようと努め、そのニーズを満たすデザインを生み出します。
基本的に、UIデザインは美的体験に関係し、UXデザインは製品がどのように機能し、ユーザーにどのように感じさせるかに関係すると考えてください。
ゲームデザインにおけるUXとは?
ビデオゲームのUXデザイナーは、プレイヤーにシームレスで臨場感あふれる体験を提供することを目指しています。ゲームは面白く、魅力的で、学びやすく、プレイしやすいものでなければならず、そのためにはユーザーエクスペリエンスが最も重要な要素となります。
これには独自の課題が伴います。ゲームのUXデザイナーは、直感的な操作、明確でわかりやすいゲームの世界観をデザインし、プレイヤーがレベルごとにどのような進捗状況なのかを理解できるようなゲーム内フィードバックを提供しなければなりません。
例えば、UXデザイナーは、あらゆるレベルのプレイヤーがゲームに親しめるようにしなければなりません。新規プレイヤー向けにチュートリアルやトレーニングレベルを設けたり、難易度を調整できるオプションを用意したりするなど、さまざまな工夫を凝らします。
当然のことながら、UXデザイナーは開発者、アーティスト、その他のデザイナーと密接に協力し、一貫性があり、理解しやすく、魅力的なゲーム体験を作り出していきます。ユーザーテストはこのプロセスの重要な要素であり、フィードバックを集めることがユーザー体験を改善する確実な方法なのです。
それでは、UXゲームデザインの重要な要素をもう少し掘り下げて見ていきましょう。
シグナルとフィードバック
シグナルとフィードバックは、ゲーマーがゲームの世界に「没頭」できるような、充実した魅力的な体験を生み出します。
シグナルとは、視覚的または聴覚的な合図を指し、プレイヤーに周囲で何が起こっているかを伝えます。アイコンや色、アニメーションのような視覚的な合図や、指示や警告のようなテキストメッセージが含まれます。
シグナルの目的は、プレイヤーがゲームの仕組みを理解し、ゲーム内をナビゲートし、目標を達成できるようにすることです。シグナルの例としては、プレイヤーがチャレンジに成功した時や敵を倒した時に流れる効果音や、プレイヤーの現在の目的やクエストを示すために画面に表示されるビジュアルアイコンなどが挙げられます。
フィードバックとは、プレイヤーの操作に対するゲームの反応です。
ゲームからプレイヤーへの情報伝達の手段で、プレイヤーの行動や選択の結果を知らせるものであれば、その形式は自由です。効果的なフィードバックは、プレイヤーのゲームへの関与と満足度を高めるために、分かりやすく、タイムリーで、有意義なものでなければなりません。
フィードバックにはポジティブなものとネガティブなものが存在します。肯定的なフィードバックは、プレイヤーの操作を強化し、継続を後押しします。一方、否定的なフィードバックは、プレイヤーの操作が否定的な結果をもたらすことを知らせ、戦略や操作を修正・改善する機会を与えます。
例えば、プレイヤーが高いところから落ちてキャラクターが死んだとします。これが否定的な「フィードバック」です。
要するに、シグナルとフィードバックは、プレイヤーがゲームの世界に対して感じる感情的なつながりを増大させるので、ビデオゲームにおけるUXデザインに不可欠な要素なのです。
ユーザビリティ
どんな優れたビデオゲームでも、一度プレイすれば何時間、何日間、何週間でも夢中になれるかどうかが重要な要素となります。それを実現するためには、ゲームのインターフェイスが簡単に操作できるものでなければならず、操作も簡単に覚えられるような直感的なものでなければなりません。
さて、ここからは人間工学についてです。UXデザイナーは、ゲームが身体的な負担や不快感を最小限に抑えるようにしなければなりません。例えば、操作については肉体的苦痛を抑制するような配慮が求められます。
どんなに熱心なゲーム愛好家でも、延々と身体的不快感を与え続けるようなゲームをプレイし続けることはないはずです。
オンボーディング
新しいゲームのチュートリアルを始めたが、インターフェイスが乱雑で、操作も複雑すぎると感じたことがある方もいるのではないでしょうか。YouTubeで延々とゲームプレイのチュートリアルを繰り返すなんて、時間も労力も無駄に消費するようなことは誰でも避けたいはずです。
UXデザイナーは、新規プレイヤーの習得過程が可能な限りスムーズでシームレスなものになるよう取り組んでいます。言い換えれば、ゲームの遊び方を学ぶ過程は、プレイヤーにとってとても楽しく、有益なものでなければならないのです。
優れたオンボーディングはフラストレーションを軽減し、プレーヤーがゲーム機を投げ捨てたり、SNS上で不満を爆発させたりする可能性を低くします。
これにはちょっとした創造性が必要です。UXゲームデザイナーは、魅力溢れるインタラクティブなチュートリアルやガイド付き体験コンテンツを作成し、新しいプレイヤーに操作方法や目標、ルールを優しくレクチャーします。(例:『コール オブ デューティ ワールドウォーII』のスタート画面)
ゲームが進むにつれて、ツールのヒントや状況に応じたヘルプシステム(例:『Crusader Kings III』)はプレイヤーに重要な情報を提供し、進行に応じてその内容は複雑さを増していきます。
プレイテスト
もうお気づきだと思いますが、実際のユーザーに対してゲームをテストすることは非常に重要です。プレイテストはゲームデザインに欠かせない要素であり、ユーザーからの貴重なフィードバックを得ることで、ユーザーエクスペリエンス全体の改善に役立てることができます。
プレイヤーが実際にゲームを操作する様子を観察することで、デザイナーはメカニクスやシステムがどのように機能しているのかを把握し、改善すべき点を特定、全体的なデザインの改良を行うことができます。
デザイナーが早期のプロトタイピングに時間とリソースを投資することで、プレイテストの効果は大きく向上します。開発プロセスの早い段階でプロトタイプを作成しテストすることで、デザイナーは大きな問題になる前に問題を特定し対処することができ、長期的には時間とリソースを大幅に節約できる可能性があります。
また、プロトタイプを早期作成することで、デザイナーはさまざまなアイデアや仕組みを試すことができ、デザインプロセス全体を通してより大きな柔軟性と創造性を発揮することができます。
最終的に、ゲームデザインにおける徹底的なプレイテストと早期プロトタイピングは、バグや人間工学的な問題を特定し、プレイヤーにとってより楽しく魅力的なゲームを生み出すことができます。
デザインにおけるプロトタイピングの重要性について詳しくはこちら
UXゲームデザインの各段階
どのUXチームも同じではないので、そのプロセスは異なることがあります。しかし、共通点も存在します。ここでは、UXゲームデザインにおけるさまざまな段階を見ていきましょう。
リサーチとプランニング:この段階では、ターゲット層をリサーチし、ユーザーのニーズを特定します。
コンセプトとアイデア:ストーリーのアイデアからゲームの仕組みまで、このプロセスでは通常、プロトタイプを作成し、これらのアイデアを実行可能な形に仕上げます。
デザインと制作:この段階では、ゲームのインターフェイス、グラフィック、サウンド、その他の要素を開発します。詳しい設計書やワイヤーフレームを作成したり、ゲームのコーディングやテストを行ったりします。
テストとイテレーション:ゲームのプロトタイプを実際のユーザーと共にプレイテストし、ユーザビリティやユーザーエクスペリエンスに関するフィードバックを収集します。そして、そのフィードバックを基に、改良を繰り返します。
発売と発売後:一般ユーザー向けにゲームを発売し、マーケティングや広告を通じてプロモーションを実施します。発売を最後にUXデザイナーの仕事が終わるわけではありません。ユーザーエクスペリエンスに基づいたアップデートや改善、そして継続的なサポートやメンテナンスが必要となります。
UXゲームデザインには、何度も反復する性質ゆえに、同じような作業がたくさんあります。リサーチ、ユーザーテスト、修正のサイクルは果てしなく続くのです。
TreyarchやParadoxのような企業でさえ、大コケするかもしれないゲームのコーディングに複数のエンジニアチームを投入する予算はありません。だからこそ、迅速なハイファイ・プロトタイピングが不可欠なのです。
なぜゲームデザインにおいてUXが重要なのか?
ユーザーエクスペリエンス(UX)は、プレイヤーがゲームとどのように関わるかに直接影響するため、ビデオゲームのデザインにおいて極めて重要です。
ポジティブなUXは、プレイヤーのエンゲージメントとリテンションを高めることができる一方、お粗末なUXはフラストレーションを生み、プレイヤーがそのゲームから離れる原因となり得ます。
例として、ゲーム界で知名度の高い2つの人気ゲーム、フォートナイトとマインクラフトを見てみましょう。直感的な操作性、明確なゴール、一貫性のある魅力的なストーリー展開、そしてアクセシビリティの高さが評価されています。実際、フォートナイトはあまりにも人を夢中にさせるため、子供たちが学業から遠ざかってしまうのではないかと保護者たちから心配され、論争になったほどです。
操作が複雑で使いこなすのが難しいゲームは、大きなフラストレーションにつながります。この例として、『エイリアン:コロニアルマリーンズ』が挙げられます。このFPSは、その複雑な操作性で評論家からもプレイヤーからも非難を浴びました。プレイヤーは、最も基本的な機能(エイムや移動など)を実行することさえ苦労したと語りました。
混乱したインターフェースや乱雑なインターフェースも同様で、プレイヤーがゲーム内の移動や情報の入手をするのが困難となります。『Warcraft III(ウォークラフト III):Reforged』がその一例です。機能の少なさ、デザインの選択ミス、バグが原因で、プレイヤーから酷評されました。
UXゲームデザインをレベルアップするには?
ビデオゲーム市場の競争はますます激化しています。競合他社に差をつけるにはどうすればいいのでしょうか?
ここでは、いくつかの秘訣をご紹介します。
ターゲットを知る
ターゲット層を理解することは、プレイヤーの心を掴むゲームをデザインする上で非常に重要です。ターゲットとする層と傾向をよく調べましょう。情報は何よりも頼りになります。
どのようなゲームを好んでプレイしているのか?操作は直感的か?何が効果的か?逆にダメなものは?操作方法であれ、ゲームデザインであれ、これらの情報を判断材料として活用しましょう。
アクセシビリティの重視
ゲーム初心者や身体的・知的障害を抱えるユーザーを含め、あらゆるレベルのプレーヤーがゲームを楽しめるように工夫することが重要です。調整可能な難易度、字幕、色盲モードなどの機能を盛り込みましょう。
ユーザビリティを優先する
ゲームの操作を複雑にしすぎてはいけません。マインクラフトやフォートナイトを見習いましょう。時間が限られている中で、アクセシビリティは最重要事項といっても過言ではありません。優れたゲームは、直感的な操作と明確なフィードバックによって、理解しやすく操作が簡単です。したがって、ゲームの目的と仕組みを最初から明確にすることで、チュートリアルや解説の必要性を最小限に抑えましょう。
テスト、イテレーション、最適化
すべての工程に何百万ドルも払わなければならない時代は終わりました。忠実度の高いゲームのプロトタイプを迅速に作成することで、リスクの軽減を図りましょう。
ProtoPieを使えば、コードは一切不要で、実際のゲームのように機能するリアルなプロトタイプを作成することができます。
実際のユーザーと定期的にゲームをプレイテストし、フィードバックを収集して、ゲームデザインを繰り返し改良します。エンゲージメント、リテンション、プレイヤー満足度などの指標を継続的にモニターし、改善点を洗い出しましょう。
エンゲージメントを重視する
優れたゲームとは、芸術溢れるヨーロッパ中世の街並みのようなものです。つまり、魅力的で心惹かれるようなゲームをデザインし、物語的要素やゲームメカニクス、視覚的・聴覚的な手がかりをふんだんに盛り込んだ、プレイヤーが自由時間のすべてを費やしたくなるような、深く没入できる世界を作り上げるのです。ゲーム内の進行や達成感が明確に感じられると良いでしょう。
バランスを保つ
難易度とプレイヤーの上達のバランスを考慮し、チャレンジングでありながらフラストレーションを感じさせないゲームをデザインしましょう。公平で、プレイヤーの努力が報われ、課題を克服したときに達成感が得られるようなゲームが理想的です。
常に最新のトレンドとテクノロジーに精通する
絶えず最先端を学び、最新の状態を維持しましょう。ゲーム界のアインシュタインやニュートンのような人たちから学べることは無限にあるはずです。ゲームデザインの最新トレンドや世界を席巻するテクノロジーに目を光らせましょう。最もフレッシュなプラットフォームやゲームエンジン、そして新たなゲームメカニクスを探求するのです。
これらのヒントに沿って取り組むことで、デザイナーはあらゆるスキルレベルのプレイヤーにとって魅力的で、親しみやすく、楽しめるゲームを作ることができるでしょう。
ゲームにおけるUX問題への取り組み方
システムに不具合が発生した場合、どう対処しますか?ゲームでUXの問題に直面したとき、UXデザイナーは以下の手順を踏む必要があります。
問題を特定する:まず、デザイナーは具体的なUXの問題とその根本原因を特定する必要があります。これには、問題の原因を突き止めるために、プレイヤーからのフィードバックを収集したり、ユーザビリティテストを実施したりすることが含まれます。
潜在的な解決策を検討する:問題が特定されたら、デザイナーは問題に対処するためのソリューションを検討します。これには、アイデアのブレーンストーミング、ベストプラクティスの調査、またはデザインチームの他のメンバーへの相談が含まれます。
変更を実施する:潜在的な解決策を検討した後、デザイナーはその変更を実装する必要があります。これには、ゲームメカニクス、ユーザーインターフェイス要素、またはその他のデザイン機能の修正が含まれる場合があります。
テストと改良:変更が実装されたら、デザイナーはUXの問題が解決されていることを確認するためにゲームをテストする必要があります。これには、追加のプレイテストを行ったり、プレイヤーからのフィードバックを集めたりすることが含まれます。他の問題が確認された場合、デザイナーは必要に応じてデザインを改良する必要があります。
モニタリングとイテレーション:これには、プレイヤーの行動を分析したり、エンゲージメントやリテンションなどの指標をモニタリング、継続的なユーザビリティテストを実施したりすることが含まれます。
これらの手順に沿えば、デザイナーはゲームにおけるUXの諸問題を効果的に解決し、プレイヤーにとってより魅力的で楽しい体験を生み出すことができるでしょう。
ProtoPieでUXゲームデザインのリスクを回避しよう
プロトタイピングは、今やUXゲームデザインの要となっています。高忠実度のプロトタイピングを迅速に行うことで、内容の濃い充実したアイデアをより早く実現し、シームレスなユーザーテストを行うことができます。ProtoPieをぜひお試しください。こちらからデモをご予約いただけます。
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